心に残る歌詞はどうやって書く? 作詞の流れやコツ・表現技法を徹底解説!
曲のコードとメロディが完成して、いざ作詞をしようとしても『何から始めればいいのかわからない…』『上手く歌詞が書けない…』
そんな作詞に関する悩みを、一つずつ解消していきましょう!
作詞って簡単?難しい?
結論から申し上げますと、『心に残る歌詞』を書くことはとても難しいです。
しかし、歌詞を書くこと自体は難しいことではありませんので、ご安心ください!人によってやり方は異なる作詞ですが、一つの指標として考えていただければ幸いです。
①プロットを作る
①テーマ
初めに歌詞のストーリープロット(構想、筋立て)を考えていきます。
歌詞の書き方は大まかに分けて、歌詞以外が完成している曲に、後から歌詞を入れていく『曲先』と、最初に歌詞から考える『詞先』に分かれます。
今回は曲先を中心に考えていきます。
まず、実際に楽曲を聴いてみたイメージを言葉にしていきます。
例えば、楽曲の中に『青春と友情』などのテーマを感じた場合は、それを大きな基準としてプロットを作っていきましょう。
詞先である場合は、どのようなテーマで作りたいかを考えます。
また、ストーリーがフィクションかノンフィクション、またはその両方を含む内容なのかを予め決めておくことで、スムーズにプロットを作ることができます。
②何を伝えたいか
何を伝えたいか、というのは作詞において非常に重要な要素になります。
曲を聴くことで元気になってほしい!などの、単純な作り手の想いもこの場合含まれます。この部分を明確にすることで、ストーリーがより洗礼された内容になってきます。
テーマが『青春と友情』である場合、例えば
学生時代は一分一秒かけがえのない青春だったが、大人になった今は忙しさと疲れで、友達にもほとんど会えていない人が多いと感じている。
学生時代の青春を歌詞にして、曲を聴くことで懐かしさを感じたり、最近会えてない友達に連絡するきっかけになってほしい。
など、伝えたい内容を予め決めることが重要になります。(非常に難しいですが、聴き手によってその歌詞の印象が変化するような内容を、狙って作ることも可能です)
ただ学生時代の青春を歌詞にしたい!などでも全く問題ありませんが、ある程度は伝えたい内容を決めておくことが、良い歌詞を書く近道だと感じています。
聴き手の存在を常に意識することが大切です。
③テンション感
作詞において、テンション(気持ちの高さ)も非常に重要になります。
一定のテンション感を常に感じるものよりも、振り幅を持たせることで心に残りやすく、退屈もしにくいと感じる場合が多いでしょう。
ハリウッド映画などでも、何分かに一回必ず大きく展開を変えて視聴者の心に残す、といった技法を用いています。もちろん歌詞を作るにあたって正解などはありませんので、最初から最後まで振り切った歌詞でも問題はありません。
テンションの振り幅をもたせることで、ストーリーの展開を構成しやすくなります。
楽曲全体を通してのテンションの振り幅を、簡単なグラフなどにしてみると、わかりやすく考えやすいかもしれません。
④登場人物
登場人物を決めていきましょう。
歌詞という限られた中での登場人物は、なるべく少ない方がわかりやすい内容になります。
一人称("私"などの語り手)と、二人称("あなた"などの人物)の呼び方を考えていきましょう。
登場人物の選定は単純に一人称、二人称の二通りが最も使われるケースですが、二人称の相手が二人以上の場合や三人称を使用する場合などは、呼び方を変える必要がありますので注意が必要です。
登場人物を人ではない個体にする場合も、色々と予め決めておくことが、プロット作成時の混乱を防ぎます。
作詞中で一人称、二人称が変化するパターンなどもありますのでご紹介します。
語り手が途中で変化する場合
恋愛などをテーマにした歌詞では、稀に見られる手法です。デュエットなどを想定している場合に、使われることが多くなります。
男性と女性が一人ずつ登場する場合に、一番の歌詞では女性視点の歌詞になり、二番の歌詞では男性視点の歌詞などにするという方法です。
男性が語り手になるパートの場合は、例えば一人称が"僕"で、二人称が"君"になり、男性口調の歌詞に。
女性が語り手に変わる場合は、一人称が"私"で、二人称が"あなた"などになり、女性口調の歌詞になります。
登場人物が二人でも呼び方の種類が、合わせて四種類になります。語り手が途中で変化する場合は、それぞれ違う呼び方を定めることで、聴き手の混乱を防ぐことができます。
登場人物の心境の変化
ストーリーの流れの中で、語り手を変化させず一人称、二人称の呼び方が変わる場合もあります。
これは語り手の心境の変化や、時間の流れを直接的な歌詞にせず、表現する方法です。
前半では女性が語り手の場合、"あたし"などの一人称を使い、後半では”私”に変更する場合や、二人称を"あなた"から"君"などに、ストーリーの中で変化させるなどします。登場人物の関係性やキャラクター性を呼び方で表現するのも、作詞では重要になるでしょう。
一人称、二人称を使用しない場合
"わたし"や"あなた"などの呼び方を一切使用せずに、歌詞全体を通して登場人物を聴き手に想像させる方法です。
例文『洗面台には歯ブラシが二つ、机の上にはお揃いのネックレス。ダブルベットを一人で使う夜には、もう慣れてしまった。』
このように呼称を一切使用せずに作詞を行う場合もありますので、一つのテクニックとして覚えておきましょう。この手法を取り入れることで、豊かな表現の歌詞を作る練習にもなりますので、是非挑戦してみてください。
舞台、場所、視点
歌詞中の出来事が、どのような舞台で行われているかを考えていきます。季節などの詳細な設定をここで決めることで、よりストーリーの幅を広げることができます。(必ずしも決めるわけではありません)
直接的な場所などの固有名詞を歌詞に入れない場合も、イメージを膨らませるために設定することで、ストーリー内容を考えるときの助けになります。
曲の進行によって場所や視点を変える場合があります。登場人物(語り手)のいる場所や、どの視点で作詞を行っていくかを設定していきます。
視点の設定例
- 登場人物(語り手)の日常生活などにおける、リアルタイムな視点を歌詞にする。
- 最初から最後まで登場人物(語り手)が同じ位置にいて、物思いにふけている内容を歌詞にする。
- 登場人物の周りでの出来事を、第三者視点で歌詞にする。
- 登場人物(語り手)の視点と、第三者視点を織り交ぜた歌詞にする。
- 登場人物(語り手)の視点と、登場人物(語り手)が自身を客観的に見ている視点を、織り交ぜた歌詞にする。
など、視点設定は様々ありますので自分が書きたい歌詞は、どの視点からのストーリーなのかを決めておくことで、歌詞が書きやすくなると思います。
情景の明瞭化
ここまで考えてきたストーリープロットを一度まとめてみましょう。
完成したプロットから見えてくる情景を、より強くイメージしていきます。様々な角度でストーリーを見てみたり、今一度伝えたい内容などを確認します。
自身の日常の中で、作成したストーリーをより深く考える機会を設けることも大切です。その中で出てきたアイデアなどを書き足していき、より凝縮されたストーリーに仕上げます。頭の中にストーリーの情景が想像できるくらいまで、ストーリーを考えていきましょう。
②文章表現の手法を知る
完成したストーリープロットを元に、歌詞を書いていきましょう。いざ目の前のストーリーをメロディに当てはめて言葉にしようとしても、最初は難しいはずです。
歌詞に多く使われる表現手法をいくつかご紹介いたします。これらを元に、ストーリーを歌詞にしていきましょう。
①直喩、暗喩
イメージ的には、ある物の状態を直接的な表現を使わず、遠回しに表現する手法です。
直喩
『たとえば』や『〜のような』などの言葉を使って、ある状態を比喩をします。
例『彼女はまるで猫のようだ』
『例えば彼女が猫だったとしたら』
『太陽に照らされるビル群は、まるで燃えているようだった』
隠喩
『たとえば』や『〜のようだ』などの言葉を使用せずに、ある状態を直接他のもので比喩します。
例『彼女は猫だ』
『彼女の走りはライオンだ』
『太陽に照らされるビル群は美しく、目から鱗だ。』
②擬人法
比喩表現の一つで、ある状態を人に例えて表現します。
例『空が泣いている』
『花は私に微笑みかけた』
『海が怒っている』
③反復法
同じ言葉を繰り返し用いることで、ある出来事などを強調する表現です。反復法にも様々ありますがその一例をご紹介いたします。
例『彼女は何度も何度も、彼を怒った』
『大切な家族、大切な友人、大切な街』
『あれもダメ、これもダメ、ぜんぶダメ』
③対比表現
ある物の状態を、他の何かと比較して表現する方法です。
例『彼は炎のように熱い男だが、彼女は氷のように冷たい女だ』
『私の悲しい気持ちとは裏腹に、空は燦々と私を照りつけてくる』
『私の貯金は底を尽きているが、膨れる負債は天高く上り続ける』
④倒置法
文章の語順を逆にして印象を強める表現方法です。
例『こんな時に来てしまった、上司が』
『とてつもなく鋭い、彼女の眼差しは』
『最悪な気分だ、二日酔いは』
⑤擬声語
いわゆる、オノマトペと呼ばれる表現方法です。
例『雨がポツポツと降り始めてきた』
『不意の出来事にドキドキしてしまう』
『この砂はサラサラした質感だ』
③歌詞を考える
歌詞というのは、人によって様々な考え方があり正解はありません。
今回ご紹介したのは私が作詞を行う際によく使う手法ですので、自身が最も書きやすいと思う方法で進めていくのが、一番良いと思います。私が作詞を行う際に、気をつけていることや考え方を最後にご紹介いたします。
母音、子音
サビやキメといった部分での、最初の一文字めの母音や子音に気をつけています。メロディに乗せた時に歌い出しが気持ちいいと感じるものを選んでいることが多いです。
また、ロングトーンなどでの母音は"i"を極力使わないようにするなどの考え方も大切だと思っています。
4.ブラッシュアップ
歌詞を書き進めていくと、どうしても説明口調な歌詞になってしまう場合が多いです。
基本的には引き算的な考えで、ストーリーの空白を作り、聴き手側に空白部分を想像させるような歌詞にする意識をもって書くようにしています。
ご紹介した表現方法を組み合わせ、豊かな表現をたくさん取り入れていくことも重要ですが、時にはストレートな歌詞を取り入れることも大事だと思っています。
一度できた歌詞の表現を何度か見直す、ブラッシュアップを行うことが大切です。
まとめ
本などの文章、対面での会話、メロディに乗せた歌詞は、受け取り手がもつ言葉のイメージがそれぞれ異なります。
文章をただ書くのではなく、歌詞を書いているという意識をもって作詞を行いましょう。
どれだけ良いメロディができたとしても、歌詞一つで印象が変わってしまいますので、そこが作詞における最も難しい部分だと思っています。
そして最も大切だと思うことは、メロディに対する言葉の感覚です。
メロディを口ずさんだときに、ふと出てくる言葉を大事にしていく、というのが私は大切だと感じています。人の心に残るような歌詞をたくさん作っていきましょう!
1996年7月17日生まれ。ボーカリスト。
幼い頃にドラムを始め悲願してドラム教室に加入させてもらうが、ドラムの音が気持ち良すぎたらしく叩きながら寝るため断念。
中学生の時期は東京から離れ、二年間に及ぶ鹿児島での離島生活。
16歳でボーカリストとして活動開始。
アイドルやバンド等にスクリームなどの特殊発声を含めた個人指導を定期的に実施している。